建設業の許可を取得するためには、各営業所ごとに専任技術者を1人以上配置することが義務付けられています。専任技術者とは、その営業所に常勤し、専ら職務に従事する者を指します。
専任技術者は「常勤している」必要があるため、一部の例外を除き、自社の人間であることが求められます。そして、他の法令で専任性が求められる管理建築士や宅地建物取引士などと兼務することは基本的にはできません。
また、基準を満たせば、「専任技術者」と「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」を1人で兼任することも可能です。これは特に中小規模の事業者にとって、負担が軽減されるメリットがあります。
本ページでは、専任技術者の具体的な要件や、実務経験の考え方、資格の要件について解説します。建設業許可を申請する際の重要なポイントを押さえ、スムーズな許可取得を目指しましょう。
専任技術者の要件について
専任技術者の要件は大きく分けると以下となります。
- 一定の国家資格を有している
- 取りたい許可の実務経験が10年以上ある
- 指定の学科卒+実務経験がある
一般的には、①国家資格や②実務経験10年以上のケースで要件を満たすことが多くなります。
①の場合、実務経験などがなくとも資格認定証明書の提出だけで申請することができるため、比較的スムーズに要件を満たすことができます。ただし、一部の資格では「国家資格+実務経験」の両方が必要となる場合もあります。
一方、②の場合は、10年間の工事請負契約書や請求書などを提出する必要があるため、証明のハードルが高くなる傾向があります。特に、契約関係の書類が不足している場合、実務経験を証明するのが難しくなるケースもあるため、事前に必要書類を確認しておくことが重要です。資格や指定学科の卒業をしていなくても実務経験のみで専任技術者となることができるため、このケースでの申請についても需要があります。
1.一定の国家資格を有している
専任技術者の要件を満たす国家資格には、たとえば施工管理技士、建築士、技術士などが挙げられます。これらの資格を取得している場合、その資格に基づき専任技術者となることが可能です。
ただし、資格の種類によっては「資格のみ」で要件を満たせる場合と、「資格+一定年数の実務経験」が必要な場合があります。そのため、申請の際には、取得した資格がどのような要件を満たすのかを確認することが重要です。
例えば、建設業の種類に応じて、以下のような資格が専任技術者の要件として認められています。
2.取りたい許可の実務経験が10年以上ある場合
取得を希望する許可業種において10年以上の実務経験がある場合も、専任技術者として認められます。
ただし、この場合、過去10年以上にわたる実務経験を証明するための書類を提出する必要があるため、要件を満たすハードルが高くなる傾向があります。
2-1.証明書類の用意
例えば、個人事業主で10年以上の経験を証明する場合には、確定申告書を最低10年分用意する必要があります。一部の年でも欠けている場合にはその分の工事の契約書や注文書などを用意します。これらがなければ、さらに工事の請求書と通帳を年ごとに1件ずつご用意する必要があります。
ただし、契約書や注文書、請求書などは取りたい許可にかかる工事を請け負ったことが分かる書面である必要があります。取りたい許可の経験を証明する必要があるので、どのような書面でも良いわけではありませんのでご注意ください。
建設業許可を取得している会社で実務経験を積んでいた場合には、これらの書面の用意は不要です。
2-2.常勤を証明する
書類を10年分以上ご用意いただいた上で、さらに常勤していたことを示す書類も10年分以上用意する必要があります。
これは例えば、役員であれば履歴事項全部証明書、閉鎖事項証明書などで証明できます。雇用されていた従業員の方の場合には、社会保険の被保険者記録照会回答票原本や源泉徴収票のコピーで証明が可能です。
以上のように10年分ピッタリで要件を満たすことをお考えの方の場合、実際には書類を一部用意できないというパターンが多く、実際のハードルは高いものとなっています。
3.指定の学科卒+実務経験で要件を満たす場合
指定の学科を卒業し、一定年数の実務経験を積むことで、専任技術者の要件を満たすことも可能です。
指定学科はあらかじめ定められており、建築学や土木工学などが代表的な例として挙げられます。
また、指定学科の卒業は「学校教育法に基づく学校」であることが条件となるため、大学院や職業訓練校などは対象外となります。申請時には、学歴が要件を満たしているか十分に確認することが重要です。
学歴 | 実務経験 |
---|---|
大学・高専・短大の指定学科 | 3年以上 |
高校・中等教育学校(中高一貫校)の指定学科 | 5年以上 |
専修学校(専門学校)の指定学科 | 5年以上 ※専門士、高度専門士であれば3年以上 |
上記以外 | 10年以上 |
専任技術者の要件は、建設業許可を取得するための重要なポイントです。しかし、要件を満たす方法や必要書類については、役所ごとに若干の独自ルールが存在する場合もあります。
そのため、まずは申請窓口で事前に相談し、必要な手続きや書類について確認することが大切です。確実に必要な要件を満たし、スムーズに許可取得を進めるために、早めの準備と相談をお勧めします。