建設業の許可を取得するには、さまざまな要件を満たす必要があります。その中でも特に重要なのが、「欠格要件」に該当しないことです。
欠格要件とは、一定の事由に該当すると許可を受けることができない―すなわち、「該当してはいけない条件」のことをいいます。
しかもこの要件は、申請者本人だけでなく、法人の場合は役員等にも及びます。
この記事では、建設業法第8条に基づき、欠格要件の内容とその対象範囲を分かりやすく解説します。
建設業許可の欠格要件
■欠格要件(建設業法第8条)
- 許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合
- 建設業法第8条各号のいずれかに該当する場合(詳細は次で紹介)
建設業許可を受けるためには、申請書や添付書類に虚偽の記載があったり、重要な事項の記載が漏れていたりする場合には、許可が下りません。
そしてもう一つ注意すべきなのが、許可を受けられない場合が法令で具体的に定められている点です。
以下でこの「欠格要件」の具体的な内容について紹介していきます。
具体的な欠格要件
建設業法第8条各号のいずれかに該当する場合とは、具体的には以下のいずれかに該当する場合に欠格要件に該当することとなります。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る聴聞通知を受け取った後、廃業の届出をした場合に届出から5年を経過しないもの
- 聴聞通知を受け取った日から取消処分がされた日(取消処分をしないことの決定がされた日)までの間に廃業の届出をした場合、聴聞通知を受け取った日から遡って60日前までの間に当該廃業届出をした法人の役員等若しくは政令使用人であった者(個人事業主の政令使用人を含む。)で、廃業届出の日から5年を経過しないもの
- 建設業法第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
- 建設業法第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
⇒建設業者が営業停止処分や許可の取消処分を受けた場合、法人であればその役員等や、処分の原因に関して責任がある令第3条使用人も、一定期間、新たに建設業を営むことが禁止されます(建設業法第29条の4)。この禁止期間中は、たとえ別の法人を設立したとしても、同じ人物が役員等として関与すれば欠格事由に該当するため、建設業許可を取得することはできません。 - 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 建設業法等に違反したこと又は刑法の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
⇒成年被後見人又は被保佐人に該当しない者は当該欠格事由に該当しないこととし、成年被後見人又は被保佐人に該当する場合であっても、医師の診断書などにより、回復の見込みや医師の所見を考慮した上で、建設業を適正に営むために必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができると認められる場合については、当該欠格事由に該当しないこととする。 - 未成年者の法定代理人が建設業法第8条各号のいずれかに該当するもの
- 法人の役員等又は政令で定める使用人のうちに、建設業法第8条第1号から第4号まで又は第6号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの
- 個人で政令で定める使用人のうちに、建設業法第8条第1号から第4号まで又は第6号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
許可の取得をご検討の場合には、これらに該当しないか事前に確認しましょう。
次のような法令に違反して罰金刑を受けた場合、その刑の執行が終わった日、または執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない方は、建設業許可を取得することができません。
該当する法令や罪には、以下のようなものが含まれます。
▷ 対象となる主な法令や罪
- 建設業法
- 建設工事の施工や労働者の使用に関する法令
(例:建築基準法、労働基準法など) - 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団排除条例の根拠法)
- 刑法の一部の罪:
傷害罪(刑法204条)、現場助勢(206条)、暴行(208条)、
凶器準備集合及び結集罪(208条の2)、脅迫(222条)、背任(247条) - 暴力行為等処罰法に規定される罪
▷ 建設業法違反に基づく罰金刑の具体例
- 建設業の許可を受けずに営業した場合
- 特定建設業の許可が必要な工事を無許可業者が下請契約した場合
- 営業停止処分に違反して工事を行った場合
- 営業禁止処分に違反して工事を行った場合
- 虚偽や不正な手段で許可を取得した場合 など
欠格要件に当たらないかの確認は役員全員に必要
建設業の許可を取得するには、「欠格要件」に該当しないことが前提となります。
ここで重要なのは、このチェックが申請者本人だけではなく、“一定の関係者全員”に必要だという点です。
たとえば、法人であれば代表者だけでなく、役員なども含めて、欠格要件に該当しないかを確認しなければなりません。
では、具体的に「誰」がこの確認対象となるのでしょうか?
▶申請者本人
法人、個人など、建設業の許可を申請する主体自体が欠格要件に該当しないかチェックする必要があります。
▶役員等
- 株式会社の取締役
- 委員会設置会社の執行役
- 合名会社・合資会社・合同会社の業務を執行する社員
- 上記に準ずる、法人格のある各種組合等の理事等
▶支配人
▶政令で定める使用人
建設業法施行令第3条で定められている者で、営業所ごとにその業務を統括・管理する地位にある者が該当します。
▶法定代理人
▶その他、役員等と同等以上の支配力を有する者
明確な役職に該当しなくても、法人の意思決定に重大な影響を及ぼし得る立場にある者も「欠格要件の対象」として扱われる可能性があります。
たとえば、5%以上の議決権を有する株主や出資者などがこれに該当し得ます。
建設業許可のご依頼は行政書士に
建設業許可の申請には、要件確認や、多岐にわたる書類の準備が求められます。
とくに「欠格要件」の確認は、申請者本人だけでなく、役員や一定の関係者にまで及び、見落としがあれば許可が下りないこともあります。
行政書士は、建設業法や関係法令に精通し、煩雑な手続きを一括してサポートできる国家資格者です。
当事務所では、申請者様の個別の事情に応じた対応と、スムーズな許可取得をお手伝いしております。
建設業許可をご検討の方は、どうぞお気軽にご相談ください。
下記のフォームよりお問い合わせいただけます。