建設業許可の要件① 経営業務の管理責任者とは

建設業許可制度の最大の目的は、発注者の保護を図ることです。

この目的を達成するため、建設業許可を取得するには、「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を備えていることが求められます。この要件を満たすため、主たる営業所に「経営業務管理責任者(常勤役員等)」を常勤させるか、または経営体制として直接補佐者を含む適切な人事構成を整備することが必要です。

以下で経営業務の管理責任者を満たす条件を解説していきます。

目次

1. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

許可を受ける方の多くはこの「建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者」で取得することが一般的なパターンかと思います。

令和2年10月に建設業法の改正によりこの要件に変動があります。以前は、建設業29業種の中から取得したい業種での経営経験が必要でしたが、改正後はどの業種でもよいのでとにかく5年以上建設業に関する経営経験があればよくなりました

具体的に経営業務の管理責任者としての経験とは、営業取引上、対外的に責任を有する地位(持分会社の業務を執行する社員、株式会社・有限会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役又は法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等)にあって、経営業務の執行等の建設業の経営業務について総合的に管理した経験をいいます。

これを整理すると、以下のような建設業の経験で5年以上の場合が当たります。

どのような経験が当たるか
  • 株式会社、有限会社の取締役
  • 持分会社の業務執行社員
  • 指名委員会等設置会社の執行役
  • 法人組合等の理事
  • 個人事業主又は登記された支配人
  • 令3条使用人(建設業者(許可取得済)の営業所の支店長、営業所長など)
どのような書類で経験を証明するのですか?

個人事業主の場合、開業届、5年分以上の確定申告書、工事実績を証明する請求書などで証明を行います。法人の取締役だった場合、その会社の建設業許可の書類、登記簿謄本、工事実績が確認できる書類などで証明します。


2. 管理責任者に準ずる地位にある者

「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」の実務経験でも経営管理の業務責任者となることができます。

この準ずる地位にある者は、①管理した経験②補佐した経験の2つのパターンに分かれます。

①管理した経験

建設業に関し5年以上、執行役員などとして経営業務を管理した経験を有する者も経営業務の管理責任者となることができます。

具体的には、取締役設置会社において、取締役会の決議を経て取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限移譲を受けた執行役員等のみが該当します。

どのような書類で経験を証明するのですか?

権限移譲を受けた執行役員等であったことを示す取締役会議事録によりその経験期間を証明します。
この取締役会議事録またはその他の資料から、建設業に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会の決議により決められた業務執行の方針に従って、代表取締役の指揮及び命令のもとに具体的な業務執行に専念した経験であることが読み取れる必要があります。

②補佐した経験

建設業に関し、6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐した者も経営業務の管理責任者になることができます。

例えば、法人における部長、個人事業主の専従者などが該当します。


どのように経験を証明するのですか?

個人事業の場合は、確定申告書や青色申告決算書を提出します。法人の場合は、業務権限委譲に関する議事録や組織図、業務分掌規程、定款、社内稟議書などの書類を基に、経営業務管理責任者に準ずる地位が認められるかを行政庁と相談することが必要です。このプロセスでは、書類を元に経営権限や責任の所在を証明することが求められます。


3.常勤役員+補佐する者で条件を満たす場合

常勤役員  +  直接に補佐する者

常勤役員に経営経験が足りない場合には、補佐者を配置してこれを補うこともできます。以前は建設業に関し5年以上の経営または、役員に準ずる地位の経験6年が必要でしたが、常勤役員にこれらの経験がなくとも常勤役員を直接補佐する者がいれば、経営業務管理責任者なれるようになりました。

この場合にも、常勤役員と補佐する者にそれぞれ要件が定められていますので、解説していきます。

常勤役員の要件

補佐者を配置する場合、常勤役員(個人の場合は本人等)のうち一人が、以下の①又は②のいずれかの要件を満たす必要があります

  1. 建設業に関し二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者」
    (例)例えば、建設業で2年以上の役員経験と、建設業で財務等のいずれかで管理職の経験が3年以上の合計5年以上の経験になる場合はこれを満たします。
  2. 他業種含めた合計5年以上の役員経験」 + 「建設業で2年以上の役員経験
    (例)不動産業で役員を3年務め、建設業で役員を2年半務めた場合これを満たすことができます(この場合、3年+2.5年の合計で5年以上の役員経験があることになり、建設業でも2年以上の役員経験があるため要件が満たされます。)

補佐者の要件
  • 「財務管理」「労務管理」「運営業務」について、それぞれ5年以上の経験を有すること。

注意:建設業の財務管理、労務管理、業務運営についての経験を有する者をそれぞれ置く必要がありますのでいずれかを満たした一人を置けば良いわけではありません。経験さえあれば一人で各分野を兼ねることは可能ですが、補佐者と常勤役員が同一人物にすることはできません。なお、許可を受ける事業所での経験のみ認められるため、他社での経験は認められません。
(例)財務管理、労務管理、運営業務の経験のすべての経験が5年以上あるAさんが補佐する者になる場合
(例)財務管理、労務管理が5年以上あるBさんと運営業務の経験が5年あるCさんの合計2名で補佐する者になる場合

役員の経験が足りない場合には、このように補佐する者を配置して補うこともできます。

どのような書類で経験を証明できますか?

確定申告書、工事の契約書、商業登謄本の写し、許可通知の写し、法人の組織図、年金の被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険証、業務分掌規程、稟議書、組織規程、人事発令書などの書類を駆使して証明を行います

経営業務の管理責任者の「常勤性」に注意

経営業務の管理責任者には「常勤性」が必要とされます。これは、主たる営業所で休日や休暇を除く所定の時間中、計画的に職務に従事していることを指します。したがって、他社に常勤している場合や通勤不可能な遠方に居住している場合、この要件を満たすことはできません。

また、常勤性が認められるためには、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入が条件となります。さらに、他の法令により専任性を求められる管理建築士や宅地建物取引士なども、基本的に経営業務の管理責任者と兼任することはできません。

一方で、直接雇用が必須ではないため、出向者や派遣者であっても、常勤性が認められれば経営業務の管理責任者となることが可能です。

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