古物商許可を受けるには営業所の設置が必須です。
たとえ、インターネットでのみ古物の取引を行う場合であっても必ず営業所を一か所定める必要がなります。
古物商の営業所は、古物商が業務を実際に行う場所であり、帳簿の管理や管轄警察署からの指導監督を受ける拠点となります。
実際にどこまでの物件を営業所として申請できるのか、古物商が営業所にできる場所とできない場所をご紹介します。
営業所の要件
営業所の要件は明確には定められているわけではありませんが、営業所として認められるには以下のような一定の要件が満たされていることが必要とされます。
これらを満たすことができない場所は営業所として認められない可能性があります。
- 独立性があること
- 使用権原があること
- 実態があること
独立性があること
営業所は壁などで明確に区分されている必要があります。例えば専用の個室を持たずに、オープンスペースでデスク単位で契約するコワーキングスペースの場合には、この独立性に問題があることから営業所として認められない可能性が高いです。
使用権原があること
古物商が営業所と利用する物件には、営業所として使用する権利を有している必要があります。
そのため勝手に他人の住所を無断で営業所にすることはできません。
営業所として利用するには、自己所有や賃貸借契約などに基づいて、その物件を使用する権利を持っている必要があります。
また、例えば、自己所有物件の場合でも、分譲マンションであれば管理組合の承諾を得なければならない可能性がありますし、賃貸物件でも契約内容によって大家さんの承諾が必要になることがあります。
古物商許可の審査においては、使用承諾書や賃貸借契約書の提出は原則必要ないものの、実際に使用する権利があることは事前に確認しておきましょう。
古物商許可申請において営業所物件の賃貸借契約書や使用承諾書は原則提出不要です。
したがって、営業所として利用する物件について、管理会社等から使用承諾を得ているか否かまでは申請先に感知されません。ただし、例えば滋賀県警や長野県警など一部の地域においては使用承諾書の提出を求められることがありますのでご注意ください。
実態があること
営業所には帳簿の保管義務、プレートの掲示義務、管理者の選任義務などの各種の義務があることから、実態がない物件ではこれらの義務を満たすことが難しくなります。
したがって、専用の業務スペースを持たずに、電話・住所のみが貸し出されるバーチャルオフィスなどは営業所として認められません。
- 帳簿の保管義務 … 古物の売買を行った場合には、取引の都度、帳簿又は電磁的方法により記録して保存しなければなりません。帳簿等を最終の記載をした日から三年間営業所に備え付け、又は電磁的方法による場合には当該記録をした日から三年間営業所において直ちに書面に表示することができるようにして保存しておかなければならない。
- 標識(プレート)の掲示義務 … 営業所には、その入り口などの公衆の見やすい場所に「許可を受けた公安委員会の名称」「許可証番号」「主として取り扱う古物」「古物商の氏名又は名称」を表示した標識を掲示しておかなければなりません。
- 管理者の選任義務 … 古物商は、営業所ごとに、当該営業所に係る業務を適正に実施するための責任者として、管理者一人を選任しなければならない。管理者には常勤性が求められます。
営業所にできる場所とできない場所の具体例
自己所有物件
自己所有物件は営業所とすることができます。
分譲マンションについては、管理規約により居住用に使用目的が制限されている場合があります。古物商許可の審査上は問題ありませんが、マンションの規約上、管理組合から承諾を得る必要がある場合があります。
家族所有物件
申請者のご実家など、ご家族が所有する物件も営業所とすることができます。
この場合は、管轄の警察署によっては所有者であるご家族からの使用承諾が必要になることがあります。ただし、東京都や神奈川県等の地域においては使用承諾書の提出は原則求められません。
賃貸借物件
賃貸物件は古物商の営業所とすることができます。
古物商許可申請においては賃貸借契約書や使用承諾書の提出まで求められることは基本的にありませんが、賃貸借契約書に記載される使用目的が「居住用」の場合にはなるべく大家さんからの承認を得ておくようにしましょう。
賃貸オフィスなどの場合で同一フロアを他の事業者と共有している場合には、独立性の要件を満たしているか確認が必要です。例えば、古物商の当該営業所のスペースに入るために他の事業者の専用スペースを通らなければならない場合には独立性に問題があるとみなされる可能性があります。この場合、管轄の警察署とあらかじめ相談しパーテーションを使用する等、対策をとる必要があります。
バーチャルオフィス
専用の業務スペースを持たずに、電話・住所のみが貸し出されるバーチャルオフィスは実体がないことから、営業所として認められない可能性が高いです。
レンタルオフィス
レンタルオフィスは、作業空間を複数の事業主と共有するスペースや、パーティションで区切られたフロアを利用する契約の場合には、独立性がないと考えられ、古物商許可は下りない可能性が高いです。
ただし、レンタルオフィスは独立した個室ブースを専用で利用する契約ができる場合があります。この場合は、契約期間が一定期間以上あるようであれば管轄警察署の判断によっては許可される可能性はあります。
営業所を管轄する警察署にあらかじめ確認をとることをおすすめします。
シェアオフィス
他の事業者等とともにワークスペースを共有するシェアオフィスやコワーキングスペースの場合、独立性がないと判断され営業所としての利用を許可されないことが多いです。
ただし、一部の地域においては一定の条件を満たした場合に限って許可が下りることがあります。
公営住宅
公営住宅は事務所利用不可です。住居専用として貸し出されていることから基本的には営業所としての使用は認められません。
トランクルーム
トランクルームや倉庫等については、基本的には営業所とすることはできません。
営業所には管理者の常勤性が必要であることから、人が勤務することが一般的に難しいトランクルームにおいては営業所として認められない可能性が高いです。
まとめ
自己所有物件:
- 営業所として利用可能。
- 分譲マンションでは管理規約に注意。古物商許可の審査上は問題ないが規約上管理組合の承諾が必要な場合あり。
家族が所有する物件:
- 営業所として利用可能。
- 東京都・神奈川県・千葉県等は使用承諾書不要。滋賀県・長野県などでは使用承諾書が必要な可能性あり
賃貸物件:
- 契約用途が「居住用」:営業所として利用可能。大家さんの承諾が必要な場合あり
- 契約用途が「事務所」:営業所として利用可能。
- 東京都・神奈川県の場合、賃貸借契約書、使用承諾書は原則提出不要。
営業所にできない場所:
- バーチャルオフィス、レンタルオフィス(共有スペース)、シェアオフィスなどは独立性が欠けるため許可されない。
- 公営住宅は契約上事務所利用不可なので営業所として使用できない。
以上のように、営業所として認められない可能性が高い物件であっても、管轄警察署によってはその地域性や様々な事情を考慮して古物商許可が下りる場合もあります。
古物商許可はローカルルールが存在するため最終的な判断は管轄警察署に確認してもらうことをおすすめします。
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